『中古ビルの売却』
ご所有の物件を売却する際にはどんなことに留意すべきでしょうか。
相談すべき不動産会社
中古ビルの価格は販売の仕方によって大きく変わります。不動産は個別性が高く、一つとして同じものはありません。このため価格は物件ごとに千差萬別です。特に中古ビルは利回りという指標はありますが、マンションや戸建てのような相場が無いため、価格を想定しづらいのです。よって相談する不動産会社が肝になります。
不動産会社といっても、その専門は「売買仲介」、「賃貸仲介」、「管理」、「開発」等多岐に分かれています。「売買仲介」専門の会社が向くわけですが、皆さんが知っているような大手仲介会社のほとんどが、マンションや戸建て等の住まいが専門で、中古ビル等の取扱いの経験は少ないです。大手仲介会社や銀行系の不動産会社には、中古ビルを扱うような部署もありますが、実際の担当者は若く経験豊富とは言えず、業績重視のため時間をかけた対応をしてもらえません。資産売却に関わる様々な問題を親身になって解決してくれる会社がベストです。中古ビル等を専門に扱う不動産会社で、時間をかけて対応してもらえる会社に相談されることをお薦めします。
書類
基本として大切なのは、売却物件の書類関係です。下記のようなものが必要となってきます。
・建築確認証・建築確認図・検査済証・竣工図・賃貸借契約書一式・管理契約書・修繕履歴
・測量図・境界確認書・固都税納付書・その他
現実には検査済証や図面等を無くされているケースが多くあります。これらの書類が揃っているかに否かによっても、売却価格も変わってきます。オーナーの方々は日頃から、書類関係はしっかり保存する癖をつけておきましょう。
遵法性
コンプライアンスの重要性が認識される現代においては、物件の遵法性が担保されているかは大きなポイントです。遵法性が担保されていない場合には、銀行から融資が受けられません。そんなことはあるはずないと多くの方が考えると思いますが、知らぬ間にそういったことが起きているケースは多くあります。地下のピットを倉庫として使うために登記をしてしまい、検査済が下りているのに、容積オーバーになっていることがありました。廊下幅が図面と施工に違いがあり、足りてないなんてこともありました。テナントが廊下に冷蔵庫等の動かしづらい荷物を置いてしまい、消防検査にて避難経路が確保できていないと指摘されていることもありました。このような状態では買ってくれる会社は、専門の買取り業者に絞られて、価格は相当安くなります。売主の段階で事前に解消することを専門家とともに検討しましょう。
商品化
中古の商品ですので、どんな状況か事前によく確認する必要があります。状況によっては、直したり、綺麗にしたりする必要があります。お住まいのマンションや戸建てに不動産会社から「高値で買い取りさせてください」といったビラが入ることが多いかと思います。そういったビラには、「そのままでOK」とか、「売却後1年間は住んでいてもOK」とかの記載があるケースがあります。これは売主さんに面倒はかけさせないけど、手間がかかる分は安く買わせてもらいますということです。考えてみれば、買取り業者はビジネスですから当たり前のことです。逆に言えば、このような買取り業者と同じように物件を綺麗に商品化できれば高く売れるということです。例えば賃貸物件で空室が多くあるより、満室稼働のほうが、当然高く売れることになります。このような対応は簡単なことではありませんので、専門家への相談と依頼が必要となります。
売却タイミング
銀行借入において早期返済にペナルティーが付いているケースがありますので、事前確認が必要です。また利益が出るにしても赤字のケースでも、個人や会社に大きな影響がある可能性がありますので、事前確認が必要です。
皆さんは不動産価格が高いときに売りたいと考えると思いますが、そういう時は買換えで買う物件も高くなっています。リーマンショック等の経済状況悪化の際は避けるとして、通常の経済状況においては、さほどの差は無いと思います。また先行きはについては、確実なことは無いということだけは確実です(笑)
費用
売却にかかる前にかかる費用の精査も必要です。売却後の転居費用や銀行その他への返済、仲介手数料、税金等です。特に売却しても債務が残るような場合には、その債務の返済の段取りもつけておく必要があります。
テナントへの通知
売却にあたって、テナントには売却前はもちろんのこと、契約した段階でも伝える必要はありません。テナントには、決済後速やかに売主買主連名にて書面で伝えることになります。
販売方法
ここから先は不動産会社の仕事となりますが、売主になる方も頭に入れておくと良いと思います。物件にもよりますが、基本的には沢山の会社に購入の検討をしてもらい、購入の競合をさせることにより価格が上がるように運びたいところです。一方不動産業界では、不動産の情報はバラまかないほうがよいと謂われます。不動産仲介会社というのは、売却情報を購入者に届けるのが仕事で、不動産開発業者は不動産を購入するのが仕事になるわけですが、購入するためには様々な調査をしたり、費用を使って点検や検証を行います。さらに社内で購入の会議にかけ稟議にかけます。金融機関にも、査定を依頼し、融資稟議を書いてもらいます。この作業には物件に拠りますが、1ヶ月近くを要します。それほどの作業を行ったにもかかわらず購入できないということになれば、このような売却の情報はもう検討したくないと考えることでしょう。よって購入検討者は物件の情報が複数から来る物件は購入の可能性が低いと考え、検討自体を避けるのです。
不動産仲介業者で他の不動産仲介業者を介さずに直接購入先と話ができる会社に依頼すれば、売却情報がバラまかれることなく、高い金額の提示を受けることができるのです。依頼した不動産仲介業者には、まずは他の不動産仲介業者に情報を流すのはしない形で進めて欲しいと依頼すべきです。売りづらい物件については、逆にレインズへの掲載を依頼し、売却情報を広めるほうがよいでしょう。
入札
最近入札という方式を取って売却したらどうかと聞かれます。これはケースバイケースです。信託銀行等の銀行系の不動産会社は高く売った証を残すためにこの方式を採ることが多いです。入札の場合、競合各社の公平を規するため、物件の内容を事前に書類にし、期間を決めて行います。後々ブレイクしないためにも、融資特約等の買主側の条件は認めません。よって、購入者が資金の問題の無い大手開発業者と想定される物件には有効です。中古ビルで、例えば自分の住まいもあって引渡し時期を相談したいケースや時間をかけても高く売りたいケース等は入札に向かないと考えられます。