■M&A
コラムvol.12 令和4年11月22日号
最近、M&A仲介会社のテレビCMが増えています。高度成長期にスタートした会社が、時代の変化と後継者不足から、M&A(事業承継)に至るケースが多いようです。ご存知の通り、会社にある資金を個人に移そうとすると、所得税住民税等により段階的に最高約55%の税金がかかります。M&Aでは株の売却という形を取りますので、金融資産の譲渡となり約20%の税金で済みます。適法かつ有効な方法です。
長いお付き合いの税理士A先生からのご紹介で、弊社もM&Aの仲介を行いました。このA先生は、お客様となる法人の税理士という枠を超えて、経営相談のメンター(師)といった方です。本事案も当該法人のオーナーがA先生に事業承継の相談をしたところからスタートしました。対象となる法人は、事業承継の初期段階で本業の運送業を同業他社に売却をしました。残った資産は、千代田区内に3棟のオフィスビルを所有する不動産賃貸業を営む法人となりました。不動産のことなら弊社ブロッサムということで、この法人のM&A仲介を任せていただけることになりました。A先生の信頼に適うために責任重大です。
事前に簡易査定を行い、それがある程度オーナーのイメージに合っていたようです。またオーナーからはできれば今期決算で目途をつけたいとのオーダーがありました。M&A仲介の契約をしてからは、後戻りの無いように、焦る気持ちを押さえて資料集めと精査を1.5ヶ月かけて行いました。この法人は、資料がほとんど残っていて、管理もしっかりしていたので、大変助かりました。資料は電話やメールだけで依頼するのでなく、当該法人に毎週1,2度通いながら行ったので、現社長とも徐々に仲良くなりました。資料が整ってからの営業活動は、資産保有を検討している一般法人とM&A実績のある不動産会社の2つの方面に営業を行いました。
一般法人が高値をつけるかと想定しておりましたが、一般法人はM&Aに慣れていないこと、複数まとめて不動産を購入することに慎重なことから、購入検討者は上場不動産会社に絞られました。そこからは公平性を保つため入札に近い形式を取ったのですが、M&Aの場合どうしてもデューデリの機会を取らないといけません。当然にして購入検討者は、デューデリ後に取りやめることも可能です。ただそうなるとオーナーのメンツに関わりますし、1ヶ月を要すデューデリを2回行うことで2,3ヶ月ロスすることになりかねません。そうならないように、購入検討者とは事前に何度も面談を行い、最終的には購入検討会社の代表者にお会いして確認するということを行いました。それにより、基本契約からその後のデューデリでも大きな問題は出ずに進みました。本契約書においては、弁護士特有の言い回しに翻弄されながらも、大きな祖語なく進むことができました。本契約後は、決算を挟んで取引の実行に移りました。M&A仲介契約を結んでから、6ヶ月で基本契約を締結し、9ヶ月で実行し終了となりました。
購入した会社は上場企業であったので、取引内容は東証にて適時開示されました。相続税の対策としては、資産保有会社を作り不動産を保有し、評価減を使って資産を繋ぐ、ということがよく言われております。
ご子息に節税により少しでも多くの資産を残すことよりも、資産とはいえ手間のかかる不動産を残すのではなく、ご子息が自由に生きられるように現金を残すという考え方も、親心と感じました。
この経験を踏まえて、M&A(事業承継)の仲介も増やしていきたいと考えております。