約170坪 平成4年10月(1992.10)築
本件は、知合いの税理士さんよりクライアントが困っているから話を聞いて欲しいということからはじまりました。お客様は、この土地をもともとお住まいとしてご所有していました。バブル時に某M銀行の斡旋でビルを建設しました。各階には彫刻が置かれたお金のかかったビルです。バブルが崩壊し当初想定した賃料から下落し、また自営業も厳しくなり、返済がきつい状態が続いているとのことでした。事業はご子息がお継ぎになり、本ビルを担保に資金を借りようと、付き合いのある信金に何度か相談したらしいのですが、担当者は融資しますと云ってくれるのですが、審査で毎回落とされるとのことでした。資料を開示いただき調査しますと、登記上は地下がありますが、建築確認上はピットとなっており、地下がありません。登記上容積オーバーの違法建築状態となっておりました。設計士をたどって尋ねますと、使いやすいようにピットを大きくしたが、あくまでもピットだとの見解。登記を担当した土地家屋調査士は亡くなっていたのですが、知合いの土地家屋調査士に確認しますと、登記法は建築基準法と違うので登記して問題ないとのことでした。建築士からしっかりとした引継ぎがあれば起きなかった問題ですが、素人のお客様にとってはいい迷惑な話です。信金の担当者は口にしなかったとのことですが、このせいで融資が下りなかったのだと思います。
建物は築30年に近くなり、EV等の交換の時期も近づいてきており、設備の入れ替えには多額の資金が必要となります。もろもろ考慮し、所有者は売却意向となりました。ただし売ると家が無くなってしまいますので、その点も考えて欲しいとのことでした。この違法状態のままでは安くしか売れないので、高く売るために違法状態を解消すべく、法務局とも相談し、地下を塞ぎ、建築登記面積を変更しました。他にも、賃貸契約を調査しますと、1階のテナントから共益費が未収となっておりました。本ビルはお客様が自主管理をしていたのですが、テナントから1階はエレベーターを使っていないのだから共益費を払うのはおかしいと云われ、納得してしまったそうです。共益費はエレベーターの費用だけでなくビル全般の維持のための費用となります。このような諸々の精査とブラッシュアップを行い、売却のオペレーションにかかりました。まずは多くの会社に打診をし、その中から購入意欲の強い5社ほどに内覧をしてもらい、価格を出してもらいました。コロナ渦で心配しておりましたが、想定の価格を導き出すことができました。
お客様は自分のビルを手放すという残念な思いもありましたが、本ビルの借入の全額返済を行い、残金で無事に近くのマンションを購入することができました。