ヒューリックにみる建替えの効能

『ヒューリックにみる建替えの効能』

ヒューリックという会社をご存知だろうか。元は富士銀行(現みずほ銀行)の子会社で「日本橋興業」という商号で、銀行の店舗ビル等を保有し、銀行の天下り先として営んでいた会社である。2007年に商号変更を行い、2008年に東証一部上場、2020年12月には売上3396億、経常利益956億をたたき出す会社に変貌している。その経緯は、現代表取締役会長西浦氏が「ヒューリックドリーム」という形で上梓しており、上場以来8年で経常利益5倍を成し遂げたと記されています。
飛躍の大きなポイントとなったのは、施策として所有していた既存ビルの建替えを次々と行い、収益力を大幅に上げたことにあります。銀行の店舗ビルということで、駅近の良い立地にあったこと、かつての銀行のビルはセキュリティの観点からグループ外のテナントを入れない発想で作られていたため容積未消化の物件が多かったこと、同様にテナントがグループ内に限られていたので立退きがスムーズに行えたこと、みずほグループということで大変有利な条件で借入を行えたこと等、様々な好条件が重なっています。ただこれまでは他の銀行子会社同様、ビルの賃料だけで、何もしない会社であったことを考えると、とても大きな変革である。さらにヒューリックは銀行の社員寮等も保有しており、こちらも住宅としては好立地にあったのだが、選択と集中という観点から売却し、代わりに都心のビル等に組替えていきました。このように既存ビルの建替え、資産の組換えは、ヒューリックを大きく飛躍させました。

さて、貴殿ご所有の物件に転じて建替えや組換えを考えられるだろうか。特に相続で所有した物件においては、ご先祖様からの預かり物という価値観から、手をつけられていないことが多い。
ヒューリックのような成功物語は、特別視されがちなので、定性的だけでなく定量的にも確認しておくために、ご所有の物件のイメージで検証してみたい。

<現状>

土地 都内某所 50坪 容積400%
建物 RC造6階建て オフィスビル 築40年超 延べ床200坪 専有床180坪
賃貸 平均@15,000円 賃貸管理5% 建物管理2% 修繕
借入 無し 償却0と仮定
収入 15,000×180×12=32,400,000
支出 賃貸管理5%、建物管理3%、固都税2% 32,400,000×10%=3,240,000
事業収支 32,400,000―3,240,000―償却0-金利0=29,160,000
現金収支 32,400,000-3,240,000―返済0=29,160,000 ※税金等は考慮せず。

<建替え>

費用 解体費15,000,000、設計料40,000,000、建築費200,000,000、立退き35,000,000
計290,000,000
借入 費用全額 金利1.5% 35年
賃料 平均@25,000円 賃貸管理5% 建物管理2% 修繕0
収入 25,000×180×12=54,000,000
支出 賃貸管理5%、建物管理3%、固都税2% 32,400,000×10%=3,240,000

事業収支 54,000,000―5,400,000―償却5,100,000-金利4,350,000=39,150,000
現金収支 54,000,000-5,400,000―返済10,655,000=37,945,000 ※税金等は考慮せず。

このように建物を新築にすると賃料がある程度上がるエリアにおける比較では、建替えをしたほうに歩がありました。実際には、立退き期間および解体、建築期間中の収入が無くなる等のマイナスもありますので、慎重な調査と段取りが肝要となります。
ヒューリックが行ったことは、我々が同様に勇気を持って行えば、同様の結果をもたらすことでしょう。建物にはいつかは寿命が来ます。最大の防御は攻めと云われるように、タイミングを計って攻めに転じることは重要です。