建物管理のポイント

『建物管理のポイント』

ビルの運⽤における管理・清掃の重要性

ビルには寿命があります。RC・SRC造の場合、建物⾃体の寿命は 100年以上に及ぶと⾔われます。そして、建物の寿命を延ばすうえで重要な役割を果たすのが、設備管理や清掃といったメンテナンスです。いかに丈夫なビルであっても、⽇頃のメンテナンスや必要に応じ た修繕などを⾏わなければ寿命は短くなってしまいます。

私たちは普段、特に何事もなくビルを利⽤していますが、ビルを機能させるにも適切なメンテナンスが⽋かせません。しっかりとビルを管理していなければ、いずれ不具合をきたし、やがては重⼤なトラブルにつながる恐れがあります。設備管理や清掃といったメンテナンス業務があって初めて、安全・快適にビルを利⽤できるのです。
例えば、ビルの空調や電気が使えるのは当たり前のことですが、突然それが使えなくなってしまったらどうなるでしょうか。⾃社の従業員が働くオフィスビル等の場合、空調が停⽌すれば、特に夏場や冬場は厳しい環境の中での業務を強いられることになります。電気がなければ、業務の継続すらままならないでしょう。テナントビルや⼀般のお客様が利⽤する建物の場合も多⼤な迷惑をかけることになり、深刻な問題に発展する可能性もあります。

また、ビルの衛⽣環境は利⽤者の印象を左右するだけでなく、そこで働く従業員や来訪者、お客様の居⼼地、健康にまで影響を及ぼすものです。それは企業や施設の評価にもつながり、きちんと整備しておかなければ賃料やリーシング、集客⼒などに響く可能性もないとは⾔い切れません。

ビルの環境を維持するために必要なメンテナンス業務

それでは、ビルの環境を維持していくためには具体的にどういったメンテナンスをしていく必要があるのか、例を挙げながら解説していきましょう。

設備管理について

メンテナンスが必要な設備の代表例を具体的に挙げると、以下のようになっています。

空調設備 … 空調に関わる、ボイラー等が設置された機械室を指します。
電気設備 … 電気系統を調整する電気室を指します
衛⽣設備 … ⽔の使⽤に関する屋上や地下にある⽔槽などの⽔回りを指します。

上記のような設備に万⼀トラブルが発⽣してしまうと、ビルそのものの機能にも⼤きく⽀障をきたすかもしれません。
トラブルを予防するためには、⽇常的に巡回しながら設備に異常がないか点検したり、経年劣化による故障等を防ぐために定期的に部品を 交換したりする必要があります。こういった作業は資格が必要となる場合も多く、決して素⼈が対応できるものではありません。異常を放っておけば、さらに⼤きな問題に波及することもあります。また、建物が⼤規模になればなるほど、これらの業務の重要性は⾼くなるでしょう。

清掃について

衛⽣⾯に関しては、清掃の頻度や質によってビルの環境に差が出てきます。「建築物における衛⽣的環境の確保に関する法律(建築物衛⽣法)」においては、建物の衛⽣的環境を確保すべきことが定められており、多くの⼈たちが利⽤するビルはさまざまな要件を満たさなければなりません。
ビルにおけるおもな清掃ポイントは、以下のようになっています。

空気環境測定

ビル衛⽣管理法という法律で、建物内の空気中にある成分の測定が求められています。それに基づき、不特定多数の⼈が利⽤する建造物の所有者には2か⽉に1回、各階の空気環境の測定が義務付けられています。この測定を怠ることや、測定結果が基準値を満たさない場合には罰則が適⽤されることもあります。

給⽔管理

ビル衛⽣管理法に基づき、⽔質検査を6か⽉に1回、残留塩素等の測定を7⽇に1回実施しなければなりません。また、⾃治体ごとに基準が定められている場合もあります。東京都の場合、⽔質検査は6か⽉以内に給⽔系統ごとに⾏い、残留塩素等の測定は毎⽇給⽔系統ごとに実施するとされています。

排⽔管理

ビルなど多くの⼈が⽴ち⼊る建物からの排⽔は、⼀般家庭よりも汚れやすい傾向にあるため適切な排⽔管理が必要です。排⽔設備に清掃を怠らないことに加え、排⽔⼝にごみや油などを流さないようにするなど、⽇ごろからの排⽔管理の徹底も重要です。

ねずみ・こん⾍等防除

ねずみや害⾍による建物内の汚染を防ぐため、ビル衛⽣管理法に基づき6か⽉に1回ねずみ・こん⾍の防除を⾏わなければなりません。東京都の基準では、6か⽉に1回の防除に加えて1か⽉に1回⽣息状況等の点検を⾏うこととなっています。
当たり前のことですが、きちんと清掃を⾏わなければ美観を損ねるだけでは収まらず、ビルの劣化を早めてしまったり、ニオイや害⾍といった実害を引き起こしたりする可能性があります。場合によっては、利⽤者のクレームにつながることもあるでしょう。そうならないためには⽇頃からの清 掃が不可⽋ですが、簡単な清掃と業者が⾏う本格的な清掃は別物であることも、ビルを管理するうえで認識しておきたいポイントです。

法律で定められた点検・管理

上記に挙げた基本的な設備管理や清掃のほか、必ず⾏わなければならないのが、法的に義務付けられた点検・管理です。
例えば、⼀定以上の規模のビルでは、汚⽔槽の清掃を年に2回(異なる地域もあり)⾏うことが義務付けられています。また、エレベーターや万が⼀の⽕災に備えた消防設備の点検なども法律で定められています。こういった業務を確実に⾏っていなければ、⾏政指導が⼊り、最悪の場合にはビルが使⽤できなくなってしまう可能性もあります。
また、以下の防災設備については法令に基づいた点検・管理が必要です。

消⽕設備 … 消⽕器や消⽕栓
警報設備 … ⽕災報知器
避難設備 … 誘導灯、避難はしご、救助袋

消⽕設備と警報設備、避難設備については消防法に基づき、6か⽉に1回の機器点検と1年に1回の総合点検が義務付けられています。

防⽕設備 … 防⽕扉、防⽕シャッター

防⽕設備については、建築基準法の定期報告制度に基づき、年1回定期点検を⾏ってそれを報告することが義務付けられています。

ビルメンテナンス業者を選ぶ際に知っておきたいこと

ある程度規模が⼤きなビルであれば、基本的に管理業務を専⾨のビルメンテナンス業者に委託することになるでしょう。なかには、業務内容によって複数の業者と契約しているビルもあるかもしれません。複数の業者と契約している場合、設備管理・清掃、場合によっては警備まで、カバー範囲の広いひとつの業者にまとめることで運⽤を効率化できる可能性があります。業務の性質上、コストはあまり変わらないものの、窓⼝が⼀本化でき、それぞれの連携も取りやすくなります。一方で業者の都合でEV管理の会社が変更できずにコストが高止まりすること等もあります。
本篇をよく理解して、管理費総額の高い低いだけでなく、中身をよく吟味することが必要となります。

ビルメンテナンス業者に委託するコストについて

しかし、管理業務を委託するうえで気になるのがコストです。管理費は、ビルの運⽤上⽋かすことのできないランニングコストに含まれます。ライフサイクルコストを抑えるためにも、メンテナンスの費⽤はできるだけ節約したいところでしょう。

メンテナンスの費⽤は品質に直結する可能性が⾼いという点です。清掃をはじめとするビルメンテナンス業務は労働集約型。⼈件費が費⽤の多くの割合を占め、業者がより安い単価で業務を請け負うために、最近ではシニアや外国人を使うようになりました。しかし1⼈あたりの賃⾦は減らせないため、⼈件費を削減するためには、より少ない⼈員・時間でたくさんの業務を回すことになります。費⽤対効果を⾼めていくためには、メンテナンス業務の重要性や特徴をきちんと理解して、ビルの特徴に合った建物管理会社を選ぶことが大切です。

まとめ

一概にビルと云っても、規模や用途等により様々です。特に東京においては、それぞれの特徴に合った慣れた建物管理会社が存在します。ビルの特徴に合った建物管理会社を選ばれることをお勧めします。
⼊居者や訪問者が安⼼して利⽤できるビル環境を維持するには、法令を遵守した適切な管理の実施が不可⽋です。管理・清掃を効率化しつつ、より良い環境づくりをしたいとお考えであれば、専門家にご相談ください。