資産の組換え

不動産は長期投資です。売らないのが正解と云われる方もおりますが、実際に超長期でみると、相続やリフォーム費用の多額出資や空室等による収支の悪化により結果売却を迎えることが多くあります。日本では首都圏でも都心回帰により、東京都心以外は賃貸ニーズが弱まっていくエリアが増えております。よって下記に従い物件ごとに検証のうえ、戦略的に資産の組換え(建替え含む)をすることをお勧めします。
不動産投資において物件の収益は利回りで判断するのが一般的ですが、プロはIRRという指標を使うことが多いです。これは出口(売却)を迎えた時を想定しての収支となります。代表的な不動産投資商品であるリートは定期的に物件の入れ替えを行います。

考慮すべき事項
1、立地
山手線の内側や複数路線の乗入れ駅、再開発等の大規模開発が行われる駅、首都圏の主要駅からの徒歩10分以内などの将来性・希少性のある立地は、永続保有を目指しましょう。将来的には建替えを検討すべきです。普通の駅でも徒歩5分以内の駅近であれば基本保有で考えましょう。賃料により収入が積み上がった場合には更なる別物件の買い増しの検討も有効です。敷地規模があり建替えしたいが資金不足の場合には、立体買換えという方式(等価交換方式)もあります。
上記以外の賃貸ニーズが弱くなると思われる立地については。積極的に組換え戦略を検討しましょう。

2、タイミング
①、減価償却によるタイミング
減価償却が終わると償却による経費部分が無くなります。返済額を固定してローンを組んだ場合、はじめのうちは金利分の返済が多いのですが徐々に元本返済が増えていきます。経費になる減価償却よりも元本返済が多く必要になると元本返済は経費になりませんので税務上不利になります。そのようなタイミングは一つの起点です。

②、大規模修繕等が必要となるタイミング
築年を重ねると修繕費が増加します。特に築25年以上になりますと室内設備(エアコン、キッチン、バス、トイレ等)の入れ替えが生じ、築35年を超えると共用部分のEVや玄関ドアの交換も必要となり大きな費用がかかります。ただこれは必ずその時点でやらなくてはいけないというものではありません。ただし故障が起きる等待ったなしの状態になる前に対応しないと大きなマイナスの評価となります。

③、築年
旧耐震建物の場合はすでに40年以上経っていますので賃貸が稼働していても将来的に建替えを検討するのか、組換えを検討するのか考える必要があります。新耐震でも築古の建物は倒壊しやすくなります。これは築40年以上になると顕著になると云われます。東日本大震災を乗り越えているから大丈夫などと考えずに、大きな地震が来てからでは遅いです。
一棟マンションは区分マンションとは違い、金融機関は基本的に耐用年数までの融資期間しか貸してくれません。融資期間が短くなると自己資金を必要とする割合が増えて検討者が減ることになります。それをカバーするため売却価格は下がることになります。よって組換えを検討する場合には購入検討者の融資期間が20年近く見込める築30年くらいを目途に行うことを考えましょう。

④、経済状況
不動産価格は経済状況により上下します。物件が高く売れるときに売った方が良いのですが、その場合買い替える物件の価格も高いです。ここは考え過ぎても致し方ありませんので、経済が特別低迷している時期を避ければ、あとは他の要素で決めることがよいでしょう。

上記のような要素を総合的に検討し判断します。付け加えておくと、経済状況がとても悪い時期や物件の空室状況が特に悪い時期には売却するのは止めておいたほうが良いかと思います。

3、収支等
①、物件ごとの収支
物件価格は、築年による下落と物価上昇による上昇の可能性があります。築年を重ねると賃貸人を付けるのにも期間を要するようになります。修繕費の増加と賃料下落等により収支は少しずつ悪化します。
組換えをするには所有物件の売却費用や税金、購入物件の購入費用等がかかります。特にローンを抱えている場合には売却後にいくら残るか、収支に合う時点ということも重要な要素です。
各物件により程度の差はありますが、賃貸ニーズが弱くなるエリアにおいては今後収支が悪化していくので、組換えの時点では目減りがあるとしても、タイミングを見計らって実行すべきと考えます。

②、税金
a,譲渡税と買換え特例
資産の組換えすることにより、個人10年超保有で収益の約20%、法人では収益の約35%が税金として支払う必要が生じてしまいます。
個人の事業用の買換え特例に条件【譲渡資産10年超の所有、買換え資産は300㎡超、等】が合う場合にはそれを前提に考えるべきです。
※国税庁№3405事業用の資産を買い替えたときの特例、参照
b,相続税
相続税対策には不動産が有効と云われるのは、適法のもと資産圧縮を使えるからです。資産の組換えを行う際には今後の相続税のことも考慮に入れて行いましょう。資産保有会社の場合であっても、株価がどのように評価されるかを考慮しましょう。
※税金については税理士もしくは税務署にご確認ください。

4、買換え物件
買換え物件の選択も最重要です。立地重視は言うまでもありませんが、立地が良いと現在の相場価格では立地の物件は収益性が低くなります。詳細についてはここでは割愛しますが、購入する目的に鑑みつつ物件を選択してください。

総括
上述の通り決断するためには、いろいろな要素が絡み合い複雑です。
信頼できる税理士および不動産会社と良いお付き合いをすることが肝要です。